みなさんは、日常生活の中で実験動物について考えることは、少ないかもしれません。
しかし、人間が病院で治療してもらい、薬を飲み、健康食品を食べ、化粧品などを使っている裏には、多くの実験動物の恩恵があるのです。
「実験動物」といえば、モルモットが思い浮かぶかもしれませんが、現在使用されているのは圧倒的にマウスが多く、二番目にラットなのです。
実験動物
新しい治療方法や薬剤の効果、人間・動物の機能や行動の解析などを研究する上で、実験動物は必須なのです。大学や研究機関、製薬会社などの研究施設では、動物実験施設があり、多くの実験動物が飼育されています。
年に何匹
販売数でいえば、年間500万匹以上の実験動物が販売されています。さらに、動物実験施設で繁殖させる分も考慮すると、1000万匹以上が実験に使用されていると考えられます。
モルモット
実験動物と言えば「モルモットにされる」という言葉があるように、モルモットが連想されるかもしれません。確かに、昔は病理学の実験に良く使用されました。今でも、人間の生理と類似した点があることから、アレルギー分野での薬物応答の研究などに使用されます。
マウス
現在最も多く使用されている実験動物は、マウスです。和名はハツカネズミといい、野生のハツカネズミを実験用に改良したものが使用されます。毛色が白く目が赤いアルビノが多く、大きさは、卵よりも軽いサイズです。小型で飼育スペースが少なく、繁殖させやすく、遺伝子組み換えの種類も多いことから、様々な実験に使用されています。
ラット
マウスの次に多く使用されているのが、ラットです。和名はドブネズミといい、野生のドブネズミを改良したアルビノが多く、体重は、マウスの10倍ぐらいのサイズです。メスは、片手に乗るサイズですが、オスは乗らないぐらいの大きさです。マウスよりは大型ですが、知能が高く、行動学や学習能力の実験に使用されます。また、ある程度のサイズの臓器が必要な実験や、複雑な手術をする実験にも使用されます。
コモンマーモセット
小型の霊長類(サル目)で、ラットと同じぐらいの大きさです。近年、実験動物中央研究所が、コモンマーモセットにGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子を導入し、世界で初めて遺伝子改変の霊長類を作成しました。ヒトに特有の疾患や脳機能の研究には、げっ歯類であるマウスやラットよりも、霊長類のほうが適しているので、今後多くの研究室で使用されることが期待されます。また、ニホンザルなどよりも圧倒的に小型で飼育しやすい点もメリットです。
3Rの原則
動物実験の現場では、動物の犠牲を減らすため、3Rの原則が提唱されています。つまり、可能な限り代替方法を使用すること、実験動物の数を削減すること、無用な苦痛を与えないことという三原則です。例えば、細胞や組織を使用した実験で代替が可能なら動物実験を行わないとか、飼育環境を整え、麻酔や鎮痛剤を適切に使用し、適切に安楽死を行うことなどが含まれます。
最後に
私たちの快適な日常生活の裏には、多くの実験動物の犠牲があるのです。そのことを忘れないようにしてください。多くの実験動物施設では、一年に一回、慰霊祭を行い、実験動物を実際に犠牲にしている研究者が参列し、献花し、手を合わせているのです。
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